雨ノ朝ニ君ヲ想フ 



昨夜は星が五月蠅い程晴れていたのに
徹夜での護衛を終えて
うっとおしい土方さんをまいた途端
ぽつぽつと雨が降り出した
舌打ちしながら休業中の団子屋の軒下に滑り込んだ時には
すでに隊服はしっとりと水気を含んでいた

サアサアと流れる雨の音に包まれて
静まり返った町を眺める
明け方の歌舞伎町は寒々しいくらい静かで
昼間とは違う場所なんじゃないかと思わず考える程だ

どれほど雨を眺めていただろう
目の前の景色に見覚えがある事に気付いた

(そういえばここは…)

思った途端にどうしようもない喪失感に襲われる
あれから何年経ったのか 
なんて事を考える程自分はもう若くはない
と そんな風に思う自分に苦笑した
やみそうにない雨の中に
小さくアンタの名を呼んだら
いつの間にか隣りにいた猫がにゃあと鳴いた
雨だというのにその毛並みは白く柔らかそうで
撫でようとしてそっと手を伸ばすと
そっぽを向く様に避けられてしまった

「なんでィ 可愛くねェな」

自分でも気付かないうちに口をついて出た昔の口調に
驚いて固まっていると
白猫が足にすりよってきて
宥める様に「にゃあ」と言った

心臓が締め付けられる様に熱く痛む

「今…今俺は
 初めて会った時のアンタと
 同じくらいの年を重ねてきやしたが
 アンタのように真直ぐ生きられてますかねィ?」

顎の下をなでると
猫は気持ち良さそうにゴロゴロと喉を鳴らした

相変わらず降り続ける雨は冷たいけれど
猫と触れ合っている部分は
とても温かかった



・終・




φアトガキ 

わかりづらいですが銀時死にネタ
団子屋は銀時が贔屓にしてたお店
降れようとすれば避けるくせに
自分からすりよってくる白猫の行動はまるで銀時みたい
白猫に銀時を重ねる沖田
みたいなそんな感じ

沖田が今の銀さんと同い年くらいになったら
その時側に銀さんがいなければ
口調とか今とは少し違うんじゃないかな と 思いまし…た…

暗い…orz
でも元々私の書く文って暗いのばっかなんですよね (;σ_σ)ゞ



2006/10/27