大人の言い分 



秋の陽射降り注ぐおだやかな午後
公園のベンチで銀時は小さく溜め息をついた
目の前では神楽と沖田クンが賑やかに…否
五月蠅いなコレは
苦笑しながら自分の周りに集まった面々を見回す

今から10分前
パチンコに大負けしてベンチで惚けていたら
冷や汗ダラダラ流したおっさん…
もとい長谷川さんが隣りに座った
新台が入った時はよくあわす顔だ
別に珍しくもなんともない
そこに定春と散歩中の神楽、新八がやってきた
まぁそんな事も月一くらいであるだろう
ところがだ
今日はそれで終わらなかった
市中見回り中の沖田クンと土方クンとバッタリ遭遇
そのまま素通りしてくれれば良かったものを
またいつもの軽口で神楽を怒らせ今に至るわけで…
俺の予想では取っ組合いが始まってすぐに
土方クンが沖田クンをひきずって帰ってくれるはずだったのに
どういうわけか少し離れた所で呑気に煙草なんかふかしてやがる
今のこの状況が回りの目には
明らかに異様な光景に映るのは言うまでもない…

いーの?止めなくて
まーた真選組の評判が悪くなんじゃねぇの?

なんて
思っても言ってやらないけど
俺が止めて下さいって頼んでるみたいで胸糞悪ぃから
別に五月蠅いのには慣れてるし
その中でだって会話はできる―――



「は?まじでか
 トーシローじゃあるまいし」

長谷川さんの話に
銀さんは鼻をほじりながら鼻で笑った
(本当どうでもいい所で器用だな この人は)

「俺がなんだって?」

今まで我関せずとでも言わんばかりに
少し離れた所で煙草をふかしていた土方さんが
抜刀しそうな勢いで銀さんを睨み付ける
(この人普段から瞳孔開き気味だけど今は全開だよコレ)
慌てる僕と長谷川さんをよそに
銀さんはほじった鼻糞を指で弾く

「ん? 何土方クン?
 話にまざりたいの?」

ブチリという音が聞こえたのは
きっと僕の幻聴ではないと思う

「んなわけあるかァァァ!!
 今名前呼んだだろうが
 たたっきるぞこのヤロォォォ!!」

「落ち着いて下さい! 土方さん!」

刀に手を伸ばした土方さんを
死に物狂いで押さえ付ける僕をよそに
銀さんはとぼけた顔で欠伸なんかしている
その態度が余計に土方さんを怒らせる
そこに神の救いとも思える長谷川さんのフォローが入った

「銀さん 銀さん
 トーシローの意味が通じてないんじゃねーの?
 俺達とは世代が違うんだよ」

何度目かの欠伸を飲込んだ銀さんが
盛大にむせる音で土方さんの動きが止まる
ついでにさっきまでうざいくらいに争っていた
神楽ちゃんと沖田さんも喧嘩をやめてこちらを見た
計4人の突き刺さるような視線と沈黙に
銀さんは慌てたように全員の顔を見回した

「トーシローっつったら素人のことじゃねぇか!
 わかるだろ?わかるよな!?」

「…………」

尚も重々しい沈黙がながれる
長谷川さんが可哀相なものを見る目で銀さんを見つめている
その表情に心なしか喜びが混じっているように見えるのは
きっと僕の勘違いだろう

「は?ちょっまてまてまて
 だって土方クンと俺ってそんな変わんなくね!?
 変わんないよな!?」

未だ必死に叫ぶ銀さんの肩に手を置くと
(やっぱりなんだか嬉しそうに)
長谷川さんは諭すように言った

「だからここがちょうど境界線って事じゃねぇの?」

銀時 長谷川

――― 境界線 ―――――

土方 沖田 新八 神楽 

銀さんは肩の手を振り払って立ち上がった

「俺は認めねェ!
 だめなおっさんの仲間なんて
 マダオとひとくくりなんて!」

頭を掻き毟る様に絶叫する銀さんが何だか面白くて
(本人はものすごく真剣なのかもしれないが)
とても年上のこの人をなんだか可愛いと思ってしまったりして
ついつい悪ノリしたくなってしまう

「諦めるネ銀ちゃん
 銀ちゃんは立派に駄目なおっさんヨ」

やれやれと言うように両手の平を肩の高さで天に向けて
神楽ちゃんがふぅと息を吐く

「今週のジャンプで長谷川さんより
 駄目なおっさんだって事が証明されましたしね」

負けじと僕も便乗する

「ちょっ 銀さんいじめて楽しいの!?
 優しい言葉とかない訳!?
 あーもう絶望した!
 駄目なおっさんな自分に絶望した!!」


「銀さん流石に雑誌超えてネタぱくっちゃ駄目ですよ!!」

志村のツッコミが走る
コイツら3人をみていると何故だか心が和む
特に銀さんはアレでたぶん真剣に悩んでいるんだろうから
其処がまたおかしい
抑えられず笑ってしまった俺の胸倉に銀さんがとびついてきた

「なぁちょっ 若返りの薬とかないかな!?
 天人の科学ってずいぶん進んでんだろ?
 若返りの薬とかないのかな!?
 パチンコの景品とかでさぁ ないかなぁ!?
 ちょっと10年くらい返済したいんだけど!?」

前後に揺さぶられて首が悲鳴を上げる

「ちょっ 銀さん! ス・・・!」

ストップと言おうとしたら舌をかんだ
カナリ痛い
めげそうなくらい痛い

「返済って借金じゃないんですから」

志村 そんな呑気にツッコミいれてないで銀さんを止めてくれ
コレ俺の頭このままだともげる・・・!
なんて俺の想いが通じるはずもなく
これ頭飛ぶのも時間の問題かもな なんて
ぼんやりと考え始めた頃に

「10年って事ァ俺より若くなるって事ですねィ」

場違いにのんびりとした声が飛んできた
銀さんの動きが止まる
霞む視界で横を見ると
真選組の少年が顎に手を当ててなにやらブツブツと呟いている

「沖田クン?」

訝しげな声をあげた銀さんに
少年は花のような笑顔で顔を上げると

「俺も手伝いますぜ」

そう言って一層微笑んだ
ここに年頃の女の子がいれば誰もが
運命の出会いをしたと勘違いするに違いない
一人年頃の女の子がいるがこの子はまぁ例外だろう
その証拠に今にも噛み付かんばかりの勢いで
少年を睨み付けている

「沖田くん・・・!」

キラキラという効果音が入りそうな勢いで
銀さんが少年の手をとった
途端に場の雰囲気が凍りつく

「総悟てめェ どういうつもりだ?」

もう一人の真選組隊士
鬼の副長と呼ばれる男が冷静を装ってタバコに火をつける
(タバコ逆 逆)

「もし旦那が10年若返ったら土方さんとは約10歳差
 これで土方さんは旦那に手が出せなくなりまさァ」

さらっとものすごい事を爽やかな顔で言ってのける少年に
鬼の副長土方十四郎は灯かないタバコを吹き出した

「な!? おまっ何言って」

否定する間もなく少年がたたみかける

「自分より十も若い少年に手を出すなんて
 犯罪以外になんて呼べばいいんですかィ?」

ニヤリと笑った整った顔に
背筋をゾクリといやな汗がつたった
俺は自分の中の認識を
「爽やかな美少年」から
「できれば関わりたくない少年」に改めた

「なぁ それって遠回しに俺が犯罪者だっていいたい訳?」

いつのまにかベンチに腰を下ろしている銀さんが
つまらなそうに頬杖をついて訊ねる

「旦那の場合は手ェ出されてる訳だから大丈夫でしょう?
 それに土方さんの場合真選組副長っていうのが問題でさァ」

本当にこの少年は次から次へと
笑顔でとんでもない言葉を吐き捨てる

「ナルホド」

顔の前で手を打ち合わせる銀さんに
志村の鋭いツッコミが入る

「そこ 納得する所かぁぁぁ!?」

志村 お前こそ
ツッコムべきところは其処じゃないだろう
っていうか今更ツッコんでもなんかもう手遅れな気がする
おっさんの勘がそう告げてるきがする
銀さんはもうどっか遠い所にいっちゃってる気がする

「じゃあちょっと探しにいきやしょうか」

うろたえる面々をよそに少年はさっさと歩き始める

「なんかあっちの方にある気がする」

「あっちにあるのは甘味屋ですぜ 旦那」

当然のようにその後を追う銀さんに一堂唖然とする中

「オイオイオイオイオイィィィ!!
 行っちゃったよドSコンビ! いいんですか!?土方さん!
 仕事の途中じゃなかったんですか?」

小さな公園にむなしく志村の声が響く

鬼の副長は相変わらずタバコを逆に加えたまま
明後日の方向を眺めているし
激辛チャイナ娘は
銀さんに置いていかれたのがショックだったのか
少し瞳を潤ませながら銀さんの背中を眺めている
志村はと言えば

「て アレ?そういえば
 さっきなんかさらっと問題発言してなかったか?
 アレ? アレ?」

なんて今更な事に思考をフリーズさせている

もしかしなくともこの場の後始末をしなきゃいけないのは俺か・・・?
考えた途端どっと疲れが押し寄せる
その場に立っているのも面倒になり腰を下ろしたベンチが
まだ少しだけ温かかった

「本当アンタって人はつくづく人を振り回す」

ソレを迷惑だと思えない自分も
相当重症だなと思うがしょうがない
小さくため息をつくと
どうやってこの場を収めるかに考えをめぐらせた



・終・




φアトガキ 

携帯でうったにしては長い 上に本当文章がまとまってない
大きく3段落に分かれていますが
そのつど語り手が変わるという読みづらさ
スンマセン
ノリも中途半端で・・・
あぁもうカケラでいいから神ソラチの脳が欲しい
この話はWJがちょうどRYOUU(だっけ?)の時に
書いたものです。
文中の長谷川さんより駄目なおっさん云々はそこから


2006/09/30